アレノ

夫を殺さなければならない。
妻とその愛人は、そう思った。
幼なじみだった3人が再会し、妻と愛人が夫の存在を邪魔だと思うまでに、そんなに時間はかからなかったのだ。そして、病弱な夫を湖に突き落として殺そうとしたその時、三人はボートもろとも転覆してしまう。やっとのことで岸にたどり着くふたり。しかし、そこに夫の姿はなかった。夫は溺れて死んだのか? ふたりは、湖畔のラブホテルに宿をとり、夫の溺死体があがるのを待つことにするのだが…

フランスの文豪エミール・ゾラの名作『テレーズ・ラカン』。これまで何度も映画化されたメロドラマの原点とも言うべき小説をもとに、舞台を現代日本に置き換え、新たな映画が誕生した。主演は、NHK連続テレビ小説「花子とアン」の宇田川先生役が記憶に新しい山田真歩。その愛人を、数々の監督に愛される個性派・渋川清彦、夫を蜷川幸雄演出『ハムレット』(2012)のハムレット役に抜擢された川口覚が演じる。監督は、これまでプロデューサーとして『かぞくのくに』『夏の終り』『楽隊のうさぎ』を作り出してきた越川道夫。撮影の戸田義久、音楽の澁谷浩次(yumbo)をはじめとする気鋭のスタッフが、16mmフィルムで撮影されたざらついた映像に女と男たちのすれ違う思いと、官能の姿を描き出した。愛されたことのないものは、それが「愛」だと気づくだろうか?

病弱な夫と味気ない結婚生活を送っていた“妻”は、2人の幼馴染でもある“愛人”と不倫関係にあった。“妻”は“愛人”と逢瀬を重ねるうちに、たちまち、結婚生活で味わうことのできなかった悦びを秘かに享受し、盲目なまでに恋と情欲の虜となっていった。ある日、“妻”は“愛人”と結託し、3人で船遊びに行き、夫を湖へ突き落して、船が偶然覆った様子を装い溺死させようと企てる。しかし、湖に突き落とそうとした時、3人はボートもろとも転覆してしまう。やっとのことで岸にたどり着いた2人だったが、そこに夫の姿はなかった。夫は溺れて死んだのか?2人は湖畔のラブホテルに宿をとり、夫の溺死体があがるのを待つことにするのだが・・・。

エミール・ゾラ(1840〜1902)
フランスの小説家。自然の事実を観察し、「真実」を描くために、あらゆる美化を否定する自然主義文学の定義者であり、代表的存在。
パリ生まれ。事務員・ジャーナリストを経て短編小説の執筆にとりかかり、出世作「テレーズ・ラカン」(1867)の後、フランス第二帝政下(1852年〜1870年)の一家族の歴史を描く連作を発表。その中に「居酒屋」(77)、「ナナ」(80)、「ジェルミナール」(85)、「大地」(87)などがある。
1897年、当時のフランス陸軍参謀本部勤務の大尉であったユダヤ人のアルフレド・ドレフュスがスパイ容疑で逮捕された冤罪事件、通称“ドレフュス事件”に際し禁固刑判決を受け、一時イギリスに亡命した。
不慮のガス中毒でパリで死去。

山田真歩 YAMADA Maho

1981年生まれ、東京都出身。出版社勤務を経て、『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』(09/加藤行宏監督)で映画デビュー。
2010年には、『SRサイタマノラッパー2女子ラッパー☆傷だらけのライム』(入江悠監督)で主演。2014年、NHK・連続テレビ小説「花子とアン」の宇田川満代役で大きな注目を集める。
主な出演映画作品に『モテキ』(11/大根仁監督)、『アフロ田中』(12/松居大悟監督)、『レンタネコ』(11/荻上直子監督)、『愛と誠』(12/三池崇史監督)、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(13/吉田恵輔監督)、『自分のことばかりで情けなくなるよ』(13/松居大悟監督)、『楽隊のうさぎ』(13/鈴木卓爾監督)、 『福々荘の福ちゃん』(14/藤田容介監督)がある。2016年には、吉田恵輔監督作『ヒメアノール』などが待機中。

渋川清彦 SHIBUKAWA Kiyohiko

1974年生まれ、群馬県渋川市出身。モデル活動を経て豊田利晃監督作『ポルノスター』(98)で映画デビュー。近年の主な出演映画は『Playback』(12/三宅昌監督)、『横道世之介』(13/沖田修一監督)、『クローズEXPLODE』(14/豊田利晃監督)、『そして泥船はゆく』(14/渡辺紘文監督)など。2015年には『チョコリエッタ』、(風間志織監督)、『ジョーカー・ゲーム』(入江悠監督)、『深夜食堂』(松岡錠司監督)、『ソレダケ /that’s it』(石井岳龍監督)、『極道大戦争』(三池崇史監督)、『ラブ&ピース』(園子温監督)、『お盆の弟』(大崎章監督)、『コントロール・オブ・バイオレンス』(石原貴洋監督)など公開作が相次ぐ。
また、2011年より地元、渋川市の観光大使を務める一方、サイコビリーバンド “DYKINZ ドトキンズ”のドラムとしても活動。

川口覚 KAWAGUCHI Satoru

1982年生まれ、鳥取県出身。吉田修一氏自ら監督した映画『Water』に主演し、本格的な活動をスタート。第20回読売演劇大賞優秀作品賞等を受賞した、蜷川幸雄演出『蒼白の少年少女による「ハムレット」』で主演のハムレットを演じ好評を博した。主な出演作に、ドラマ「問題のあるレストラン」(CX)、連続ドラマW「ふたがしら」(WOWOW)、「玉音放送を作った男たち」(NHK-BSプレミアム)などがある。

内田淳子 UCHIDA Junko

1967年生まれ、石川県出身。1990年立命館大学卒業後、劇作家松田正隆らと劇団「時空劇場」の結成に参加。『紙屋悦子の青春』『海と日傘』など全作品出演。1997年解散後、『月の岬』(作・松田正隆、演出・平田オリザ)に主演し、団体として第9回読売演劇大賞最優秀作品賞を授賞。2003年京都市芸術文化奨励者。自らプロデュースしたフランス人俳優ピエール・カルニオとの二人芝居『Jericho』(作:松田正隆、演出:三浦 基)で京都〜東京〜パリ日本文化会館にて上演。この作品を機に2005年『聞こえる、あなた? fuga#3』(作・演出:太田省吾)に出演した。

遊屋慎太郎 YUYA Shintaro

1992年生まれ、静岡県出身。ファッション誌やカルチャー誌などでモデルとして活動。NYLON JAPANがプロデュースとディレクションを手掛けた桃野陽介(MONOBRIGHT)らによる新ユニット「Hocori」の「Lonely Hearts Club」のMVや「GALAXY Note Edge 【ライフスタイル篇】」のCMなどに出演し、活動の幅を広げている。

諏訪太朗 SUWA Taro

1954年生まれ、東京都出身。劇団養成所で自主映画に出演していた内藤剛志と知り合い、長崎俊一監督の『ハッピーストリート裏』(79)などの自主映画に出演。1982年に長崎監督作『九月の冗談クラブハンド』で商業映画デビューを果たす。以降も才能ある監督たちの数多い作品に出演。
オリジナルビデオ、テレビドラマなどの出演も多く、日本映画を代表する名バイプレイヤーとして活躍を続けている。

越川道夫(監督・脚本) KOSHIKAWA Michio

1965年生まれ、静岡県出身。立教大学を卒業後助監督、劇場勤務、演劇活動を経て、映画配給会社シネマ・キャッツでヨーロッパ映画の宣伝・配給に従事。97年に映画製作・配給会社スローラーナーを設立。『イディオッツ』(98/ラース・フォン・トリアー監督)、廣木隆一監督作『不貞の季節』(00)や『理髪店主の悲しみ』(02)、『贅沢の骨』(01/行定勲監督)、瀬々敬久監督作『RUSH!』(01)と『SFホイップクリーム』(02)、『孤高』(74/フィリップ・ガレル監督)、『太陽』(05/アレクサンドル・ソクーロフ監督作)などの配給・宣伝に携わる。
一方、99年に青山真治監督作『路地へ 中上健次の残したフィルム』をプロデュース、製作・配給を担当。04年には、奥原浩志監督作『青い車』のプロデューサーを担当し配給、市川準監督作『トニー滝谷』ではアソシエイト・プロデューサーとして参加した。
その後、『幽閉者』(06/足立正生監督)、タナダユキ監督作『赤い文化住宅の初子』(07)と『俺たちに明日はないッス』(08)、『砂の影』(08/甲斐田祐輔監督)、鈴木卓爾監督作『私は猫ストーカー』(09)と『ゲゲゲの女房』(10)、『森崎書店の日々』(10/日向朝子監督)などを製作している。『海炭市叙景』(10/熊切和嘉監督)では大きな評価を獲得。シネマニラ国際映画祭グランプリ、毎日映画コンクール撮影賞&音楽賞などを受賞した。
以降も『吉祥寺の朝日奈くん』(11/加藤章一監督)、『フォーゴットン・ドリームス』(11/日向朝子監督)、『惑星のかけら』(11/吉田良子監督)、『夕闇ダリア』(11/池田千尋監督)などを製作し、2012年にはヤン・ヨンヒ監督作『かぞくのくに』は第86回キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・テン1位、主演女優賞受賞(安藤サクラ)を始め、国内の映画賞を数多く受賞。国外でもベルリン国際映画祭を皮切りに、第23回ストックホルム国際映画祭、第36回モントリオール世界映画祭、第17回釜山国際映画祭などの映画祭に出品され、多くの賞を受賞。近年のプロデュース作品として、『夏の終り』(13/熊切和嘉監督)、『楽隊のうさぎ』(13/鈴木卓爾監督)、『ドライブイン蒲生』(14/たむらまさき監督)、『白河夜船』(15/若木信吾監督)、『海のふた』(15/豊島圭介監督)がある。

脚本:佐藤有記 SATO Aki

1977年生まれ。映画美学校卒業後、『ユダ』(04/瀬々敬久監督)でデビュー。その後も、社会性をもったテーマを題材に映画、テレビ、小説と多方面で執筆。手掛けた作品は、瀬々敬久監督作『肌の隙間』(05)や『泪壺』(08)、『愛するとき、愛されるとき』(10)、『孕み 白い恐怖』(05/田尻裕司監督)、『コンナオトナノオンナノコ』(07/冨永昌敬監督)、『トルソ』(10/山崎裕監督)など。2011年には、20人以上の登場人物が、複数の殺人事件をきっかけにつながっていく11年間の様子を全9章・4時間38分で描いた『ヘヴンズ・ストーリー』(10/瀬々敬久監督/第61回ベルリン国際映画祭 国際批評家連盟賞、NETPAC賞【最優秀アジア映画賞】)で第65回毎日映画コンクール脚本賞を受賞。

音楽:澁谷浩次 SHIBUYA Koji

1970年生まれ。北海道出身。1994年より仙台市に移転して以降、仙台を拠点に音楽活動を始める。即興演奏グループ「日々の泡」などを経て、1998年にバンド「yumbo」を結成。全作詞作曲&アレンジを担当。現在までに「小さな穴」(03)「明滅と反響」(06)「これが現実だ」(11)の3枚のアルバムCDを発表している。2011年3月1日、仙台市に「喫茶ホルン」を夫婦で開業した。2012年には、東日本大震災後、初めてのクリスマスを迎えた宮城県仙台市の人々を追ったドキュメンタリー『サンタクロースをつかまえて』(岩淵弘樹監督)に出演。震災直後にYouTubeにライブ動画を投稿した当時の心境を語っている。映画の音楽を担当するのは本作が初となる。

撮影:戸田義久 TODA Yoshihisa

1977年生まれ。映画美学校在学中に撮影した映画『みち』がぴあフィルムフェスティバル(PFF)で技術賞を受賞。是枝裕和監督作『誰も知らない』(04)、『花よりもなほ』(06)などの撮影助手を経て、2006年に『Life』(佐々木紳監督)でデビュー。
映画撮影作品に若松考二監督作『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08/第58回ベルリン国際映画祭NETPAC賞、CICAE賞受賞)や『キャタピラー』(10/第60回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞)、『君へ。』(11/西村晋也監督)、『吉祥寺の朝日奈くん』(11/加藤章一監督)、『かぞくのくに』(12/ヤン・ヨンヒ監督)、『楽隊のうさぎ』(13/鈴木卓爾監督)、『ドライブイン蒲生』(14/たむらまさき監督)、『海のふた』(15/豊島圭介監督)がある。

録音:山本タカアキ YAMAMOTO Takaaki

1977年生まれ。静岡県出身。録音技師、スタジオエンジニア、サウンドエンジニア。撮影現場での録音から作品の整音、音響効果まで1人で行う。日本大学芸術学部卒業後、多くの若手映像作家の作品に録音/整音で参加。手掛けた作品に冨永昌敬監督作『シャーリー・テンプル・ジャポン・パートII』(05/録音)、『パビリオン山椒魚』(06/録音)、『コンナオトナノオンナノコ』(07/録音)、『シャーリーの転落人生』(09/録音、MA【音声編集】)、『乱暴と待機』(10/整音・効果)、『ローリング』(15/整音)。 入江悠監督作『ジャポニカ・ウイルス』(06/MA)、『SR サイタマノラッパー』(09/MA)、『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー 傷だらけのライム』(10/録音)、『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11/整音)、『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(12/MA)。松江哲明監督作『ライブテープ』(09/録音)、『トーキョードリフター』(11/録音)、『フラッシュバックメモリーズ 3D』(13/整音)。前田弘二監督作『くりぃむレモン 旅の終わり』(07/MA)、『婚前特急』(11/整音)。その他にも『さくらな人たち』(09/録音/小田切譲監督)、『サンタクロースをつかまえて』(12/整音/岩淵弘樹監督)、『楽隊のうさぎ』(13/録音/鈴木卓爾監督)、『白河夜船』(15/録音/若木信吾監督)などの作品に参加。

衣装:伊藤佐智子 ITO Sachiko

映画一枚の布から始まる表現形式において常にそのコンセプチュアルワークに高い創造性を求め、自在な感性に依るオリジナリティ溢れたデザインを提供することを信条とする。広告、映画、舞台の衣裳デザインを中心にオーダーメイドシステムによるデザイン活動を展開。その後、衣裳デザイナー、スタイリストとしての活動はもとより資生堂などコスメティックをはじめとする数々の新商品開発、商業施設のスペースデザイン、CDジャケット、写真集等のアートディレクション、ビデオクリップのディレクター、井上陽水コンサートツアーにおけるセットデザイナーなど、活動は多岐に渡る。これまで手がけた衣裳デザインの作品は、舞台では「音のいない世界で」(12/長塚圭史 作・演出)、「マクベス」(13/野村萬斎 演出)、「かもめ」(13/ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出)、「マクベス」(13/長塚圭史演出)、三谷幸喜演出作の一人芝居「声」(13)や「抜目のない未亡人」(14)。映画では『オペレッタ狸御殿』(05/鈴木清順監督)、『白痴』(99/手塚眞監督)、『式日』(00/庵野秀明監督)、『春の雪』(05/行定勲監督)、『繕い裁つ人』(15/三島有紀子監督)。テレビドラマでは「NHKスペシャルドラマ 白洲次郎」(09)、「NHK連続テレビ小説 あまちゃん」(13)など多数。